天祥院英智の「模倣」とアイドル

英智には特殊技能がある。
見たものを再現できる、ゲームや漫画などで「コピー能力」とか「ラーニング」とか呼ばれる類の能力だ。
アニスタではそのあたりが詳しく描かれていなかった印象を受けたが(かけ足だったしね)、新規勢にちゃんと伝わっているんだろうか?
初耳だって人は私の把握してる範囲で解説するので、ちょっと聞いてってください。

英智のコピー能力とは

メインストーリーの時点で、英智に特殊能力があることが明かされていた。そもそも英智が【DDD】を開催した目的の一つが「素晴らしいアイドルたちの才能を自分に取りこんで強くなること」である。(目的は他にもいくつかあった。一つの行為で複数の結果を出すのが彼のやり方である)

「僕は、最高の状態の君たちと戦いたい。それを踏みつぶし、飲み干すことで、僕は最大のちからを得られる。そのための【DDD】だ」
メインストーリー 第126話

ノベライズではここで「天祥院英智という人物の最大の欲求」「あらゆるものを喰らい尽くす、ブラックホールじみた食欲」と地の文が続く。(4巻 P.292)
そう。天祥院英智の最大の欲求は、この「食欲」なのだ。(胃腸は弱い。後述)

後に『サーカス』のストでこの能力の詳細が語られた。
体力がない英智は、(体を動かしてトレーニングを積み重ねるのではなく)映像等で見たものを脳内で繰り返し再生して習得する技を見につけたのだという。究極のイメトレみたいなものだろう。
見た直後にいきなり完璧に真似はできないので、実際に身体を動かしてみて微調整しないといけないようだが、基本的には何でも真似できると思って良いだろう。
再現の精度は高く、万能の天才であり物真似上手の日々樹渉ですら英智の模倣能力を「もはや超能力ですね!」と称賛しているほどだ。

英智は最初から「そういうキャラクター」であるせいか、ステージ上のパフォーマンスのみならず色んな子の真似をしている描写がある。


英智が模倣した例

・『スーパーノヴァ』…羽目を外してアトラクションに乗りまくる
弓弦「心臓の弱いかたなどは乗ってはならない、と各アトラクションの注意書きにもございましたよ?」
英智「僕も『Trickstar』のみんなを見習って、つまらないルールを破ってみた♪」
スーパーノヴァ 不安と希望/第三話
英智はおそらく心臓が弱いせいで、活動や食事内容が色々制限されている。この日はその制限を気にせずはしゃいだようだ。
心臓-(あんスタ台詞bot)

・『サーカス』…綱渡りのロープから落下しかけたのにニヤニヤしてる英智
渉が「そういう道化た態度は私の専売特許ですよ」とボヤいてたから、ここも英智が渉の"おどけ"要素を吸収して自分のものにした、って描写だったのかもしれない。このストで英智の特殊能力が詳しく語られたから、そのオチというか伏線回収的な。
サーカス Ensemble/第二話

・『ガンマン』…3-Aのクラスメイトや転校生ちゃんの魅力を習得しようとする
英智「彼らの振る舞いを観察し、魅力の因果を紐解いて……。取りこむことができれば、僕はさらなる高みへと飛躍できる 貪り食って栄養にして、決して無駄にはしない」「君のその特性も、理解し把握し習得したい」
(WANTED!!! 第四話)

・『ガンマン』…初めてのシューティングゲームで千秋の動きを真似しようとする
英智「僕はしばらく援護に回るよ、君の動きを観察して習得するから数分だけ待ってほしいな」
(WANTED!!! 第七話)

・『ミルキーウェイ』…『Valkyrie』のパフォーマンスを反芻し取りこもうとする
「この指の角度! わかるかい! 何で思いつかなかったのかなぁ、すごいね! 斎宮くんと僕の体格差を考えると微調整が必要だけど、すぐにでも使えそう!」
ミルキーウェイ エピローグ②
同じころ、宗に「天祥院は今回のライブを経てさらに強くなるだろう」「余計な餌を与えてしまった気がする」と陰で言われている。


・『サマーライブ』…零みたいに意味深な台詞を言う
零「う~む。天祥院くんがおると、我輩が言うような良い感じの台詞を先に言われてしまうのう」
英智「いいだろう、たまには。思わせぶりに意味深なことを言う、君のおいしい立場が前からずっと羨ましかったんだ……僕は」
(サマーライブ 乾杯/第四話)


・『サマーライブ』…仲良しな『Trickstar』を見て旧『fine』時代の反省をする
英智「(ほんとに仲良しだね、君たちは。それが君たちの最大の長所だ かつて夢ノ咲学院の主人公だった僕たちに、在りし日の『fine』に欠けていたものだよ 羨ましいな)」
(サマーライブ  エピローグ②)

メインストーリーやこのときの反省が、ユニット内の親睦を深めるべきだという気持ちを起こさせ、のちの『サマーバカンス』や『ダンスフロア』に繋がっていったのかも。


・『ダンスフロア』…渉や桃李みたいに公園の遊具で遊ぼうと提案
英智「講師役が姿を見せるまでは、適当にそのへんの遊具で戯れていよう ほら、渉や桃李を見習ってさ」
ダンスフロア スローステップ/第三話


・『ダンスフロア』…昔、敬人が漫画を描くのを真似した話
英智「漫画とか書くのが大好きな友達がいてね、僕も面白そうだからって真似してみたことがある そこで、創作の難しさを知ったよ」
(ダンスフロア スローステップ/第六話)

・『サマーバカンス』『エレメント』『ボールルームコラボ』…外国語や速読、社交ダンス(基礎)を習得している発言
すごい。何かを新たに創作するのは苦手だと言っていたが、他者の模倣だけでいけることを覚えるのは得意なんだろうな。

・『喧嘩祭』…『Trickstar』を見習い、(守られてばかりで対等な友達じゃない)今の関係から前に進むため、敬人に喧嘩を仕掛ける
英智「僕も『Trickstar』のみんなを見習って……すこしばかり、時計の針を進めてみただけさ」
(喧嘩祭 暴君の詔/第一話)

・『ジングルベル』…珍しく激怒し、英智らしくない「ふざけるな」とキツい言葉を使った ←メインストーリーのスバルの影響だった説
英智「逃げるってことかい? 冗談だよね? 奇跡そのものの君たちが……? ふざけるなよ! 『Trickstar』……!」
ジングルベル surprise party/第三話
スバル「ふざけんなよ 俺はたしかにお金が好きだけど、あんたのお金はキラキラしてない!」 
メインストーリー 第84話


・『ティーパーティ』…敬人の描いた未完の同人誌の続きを読みたいが、バレたら敬人に本を燃やされそうなので転校生で妥協する
英智「司くんを見習って妥協点を見いだそうかな ○○ちゃん。君はミズハノメ先生の、一番弟子だよね 先生の代わりに、この物語のつづきを考えてほしい」
(ティーパーティ 夢のつづきを/第六話)

・『クライマックス』…バレンタインに桃李がチョコを「ぎゅ」と握らせてくれたのが嬉しかったので、千秋にそれをする
英智「ふふ。それがあんまり愛らしかったから、僕も真似してみた♪」
千秋「率直に言うが、おまえがやると意味深すぎて怖いし不気味だ」
クライマックス 祝福と返礼/第一話

・『クライマックス』…転校生の前でレオの真似をする
英智「『プロデューサー』の○○ちゃんは……。『fine』が【返礼祭】の後半戦で、どんな演目をするのかご存知なんだろうけど 『言わないで! 妄想するから!』 って、月永くんの真似をするよ」
(クライマックス エピローグ①)


・複数スト…庶民の食べ物(清涼飲料水、ジャンクフード等)を口にする
英智、本当はスナック菓子やジュースを受けつけない身体(※)だと思うんだけど、たまに食べてるよね。
(※『コンチェルト』で敬人に「貴様は胃袋が小さいからあまり食べると戻すぞ」「糖分が多くて身体に悪い」と言われてシフォンケーキを一口も分けてもらえず、『ダンスフロア』でカラオケ屋のフードを「……写真を見ただけで胸焼けがする」と言ってたぐらいなので。また、ミニイベントでは「意外と肉食」と言ってるが、好物は「仔牛のソテー」だ。仔牛の肉は牛肉より柔らかくて脂肪分が少なく、淡泊な味わいらしい。カレーも刺激が強いからと拒否してる


「午後の紅茶」ならぬ「午後の皇帝」
英智が庶民の食べ物を口にするのは、それが美味しいと感じるからではなく(缶の紅茶も「味も悪くはない」と、味が気に入ったというより"及第点だね"という感じの評価だった)、きっと「皆はああいうの自由に食べて楽しそうにしてて良いなぁ」「同じものを食べて仲間に入りたい」「大衆が好む物を理解したい」と思ってるからだろう。だから紅茶花伝(紅茶花伝とは言ってない)やポテトチップスやハンバーガーに手を伸ばすのだ。

紅茶 一匙の甘い毒/第4話
まぁ手を伸ばしてはいるけど、胃調事情を考えると、多分すぐご馳走様してるんじゃないかな。見てよこの小さなお口。完食や常食は無理でしょ? 可愛いね。
ダイナーライブ 第7話
「僕に比べれば自由で羨ましいよ、僕は体質や持病のせいで絶対に口に入れてはいけない食品が数多くあるしね」
(紅茶 一匙の甘い毒/第1話)
「僕は病弱だからね、食生活にも気を遣う……。何でも口にできる、君たちが羨ましいよ」
(朔間凛月 「紅茶ガーデン」)


真似できていないこと

友達をあだ名で呼ぶのを羨ましいと思っているのに、まだ呼べるようになっていない。凛月やレオは英智をあだ名で呼んでくれている。

英智「『かさくん』なんて呼んでるんだね、いいなぁ渾名とか…… 司くんも喜んでると思うよ、大富豪の御曹司だっていうだけでみんな遠巻きにするから」

チェックメイト エピローグ①
↑これ、英智はこう思ってるというだけで、司本人はあだ名より本名で呼んでもらいたがっている。(自分の家と名前に誇りを持っているので)

英智「渾名で呼ぶって仲良しっぽくて微笑ましいじゃないか、羨ましいぐらいだよ」
(ジングルベル エピローグ)
英智「創くん、『会長さん』『副会長さん』って他人行儀だよね 司くんを見習って、『お兄さま』とか呼んで甘えてほしい♪」
(ティーパーティ 夢のつづきを/第四話)


なぜ模倣するのか?

なぜ、英智は他の子の真似をしたがるのか?
きっと最大の理由は「うらやましいから」だろう。他の子の健康、自由、才能、未来があること、愛されていることが、羨ましくて仕方なくて、自分もそんな存在になりたいのだ。アイドルを目指したのも、TVの中のアイドルを見て憧れたからだ。

英智「君たちはずるいね、神さまに愛されている ねぇ渉、僕はね……。昔から君が、君たちが羨ましくて仕方がないんだよ」
ミルキーウェイ エピローグ②
英智「自由でこそ君だ。存分に人生を謳歌しなさい、僕は君が羨ましいよ」 (喧嘩祭 暴君の詔/第二話)
英智「good night、陽気で厄介な『UNDEAD』たち まったく、君たちはいつも楽しそうで羨ましいよ」(メインストーリー 第百二十五話「帰還」)

英智「君は今でもそうやって、誰かが折れてしまわないように何気なく寄り添っているんだね 昔から、そういう点は尊敬している。僕も、できれば君のようになりたかったよ」
ジングルベル child birth/第三話

『Trickstar』革命後の英智が丸くなって朗らかで楽しそうな顔してるの、生まれつき持ってた無邪気で柔和な面がのぞいてるんだろうな~とは思ってるけど、桃李や渉、『Trickstar』、零、凛月、つむぎ、レオ、転校生ちゃん、今まで見てきたいろんな子の「人に愛される秘訣」「長所」とかを学習して身につけてきて、随所で彼らの真似してるから、でもイイな…! 英智は、本当はみんなに愛される子になりたいんだよね…。

英智「僕はトップアイドルなどと祭りあげられているけれど、足りないところもおおい 彼は、そこを見事に補ってくれている 食い尽くせないほど多種多様な技術、芸をもつ」
(サーカス Elegant/第一話)
自分は持たざる者、足りないところが多い人間だと自覚して、素直に柔軟にひとの良いところを真似できるのは英智の長所だね。

そういや、ダジャレ言うようになったのって3年生になってからな気がする。桃李ちゃんのダジャレは北斗の影響らしい(『紅茶』スト)が、英智がダジャレ言うのも『Trickstar』の影響だったりする? 『EP:Link』でも「君たちは常にお笑い番組みたいなノリ」って言ってたね。


真似したいアイドル

英智は、見た人に「真似したい」と思われるようなアイドルを理想としている。

「『あんなの真似できない』『人間業じゃない』なんて思われたら、お終いなんだ 『あんなふうになりたい』『あのぐらいなら自分にもできる』なんて、理解できる範疇のものを見せるのが望ましいね 誰にでもできる、僕にでも君にでも……」
ダンスフロア スローステップ/第7話

英智「『お金があったから』でも『運が良かったから』でも『天才だったから』でもなく 他のみんなとそう変わらないのに、『がんばったから』栄光を掴めたのだと そう思われてこそ初めて、他のやる気のない連中も『自分もやってやろう』と立ち上がってくれるはずだよ 『自分も同じことができるかもしれない』という、いわば希望こそが必要だ」
ワンダーゲーム outbreak/第11話

なぜ真似したいと思われることが重要なのか?というと、佐賀美先生の言葉を借りると、見た人の人生を輝かせるのが「アイドル」だからである。
陣「その輝きは世界を照らし、それに触れたものの人生をちょっとだけ喜ばしいものにしてくれる。アイドルって、そういうもんだろ?」
(メインストーリー 第96話「待望」)

見ると圧倒されてしまい、「あぁ~~駄目だ、あの人は天才すぎる。俺にはあんなの到底真似できない…」「自分はああなれないから頑張っても無駄」「あいつらは良いよな、恵まれてて…」て凹ませるような人はきっとアイドルではないのだ。
真似したいとか、(自分と同じ人間の)彼らみたいに私もやってみよう!頑張ろう!と明るい気持ちにさせて、世界を良い方向に進めるのがアイドルなのだ。少なくとも英智にとっては。


先日、「羨ましい」って台詞をまとめたモーメント()()を作ったんだけど、

 ・他人を見て「良いなぁ」「うらやましい」と思う、憧れる
   ↓
 ・真似する
   ↓ (だんだん理想に近づく)
 ・本当にそういう自分になっていく
   ↓ (自分もうれしい、見てる人もうれしい、もっと真似する人が出てくる)
 ・世界にHappyが増える

って流れが、あんスタで描かれてるアイドル(=キラキラしてる人間)の本質なんじゃないかな。
あんスタがリリースから4年以上ずっとファンタジーではない「現実世界」の世界観をつらぬいて来たのも、日日日先生が我々プレイヤーに「彼らの真似を君たちプレイヤーもできるんだよ!」って言いたいからだと思ってる。同じ人間なんだから、と。

ストーリーがネタ切れになったら、「今回はファンタジーの世界線で書こう」とかになるのもアリだな、と個人的には思ってたんだけど、ならなかったね。エイプリルフール(メテオレンジャー)やコラボ企画ではちょっと異世界になってたけど。そういうとこは徹底してたと思う。
吸血鬼という人外みたいな設定も、吸血鬼っぽい体質に伝承とか脚色を加えたものだったし、渉の手品にも繰り返しタネがあると伝えてくれていた。「現実世界」における魔術やイリュージョンと同じような扱いだ。

新しい自分になること

他人の要素を取り込んで「新たな自分に成る」ことは、渉も肯定していた。

渉「そう! 仮面をつけるということは『自分を隠して消し去る』ことに非ず、『新たな自分と成る』ことなのです……☆」
日々樹渉 「響き愛」

最近、渉のつけてる「仮面」は一般人で言うところの「メイク」「ファッション」「整えて書いた文章」みたいなものかな、と思ってる。
たしかに素顔も裸も生の喋りも、"こう"じゃないんですが、こういう姿や体裁で人前に自分を出したいんです、私は自己をこういうふうに表現したいんです、って。

憧れた人の真似を続けていると、それがいつしか「自分」そのものになっていく。自分と一体化していく。
その成功例が晃牙なんだろうなぁ。憧れの朔間零の真似から始まったあのキャラを、今ではすっかり自分のものにしている。今の晃牙を見て「それって演技でしょ?」とは思わない。あれはもう晃牙本人だ。


自分やみんなや世界を、より幸せに、良いものにしてく。
あんスタが描くそのテーマは、Happy Elements社のロゴに入ってるキャッチコピー、「Make The World Happy!」も意識してるのかもしれない。




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