英智の見る「夢」について考える

英智は作中で何度か夢を見ている。(Daydreamエレメント、ジングルベル)
野望のほうの夢もそうだけど、今回語りたいのは眠っているときに見る夢のほう。

たまに「『あんさんぶるスターズ』という物語のすべては、入院中の天祥院英智が見ている夢である」という説も見かける。いやぁ、イイですね~~~。それ、本にしてください!!


『ジングルベル』のプロローグは「夢」なのか?

今開催中のイベント、『ジングルベル』のプロローグ。
ここは一応、英智の見ている夢の中のシーンとして描かれている。英智も「これは夢なんだね」と言っている。



だが、この夢の内容は現実に起きたことなのだろうか? それとも本当は何ひとつ実際には起こっていないことで、全てが幻なのだろうか。
どちらとも取れる。


・現実にあったことだよ派
息ができないほど苦しんでいる英智のところに、突然憧れのアイドルがやってくる。日々樹くんが自分ひとりのために、魔法みたいな体験を提供してくれる。すごくロマンチック……!! ブラボーーー!!!
翼を生やすのも、星空を飛ぶことも、渉ならほんとにできそう。できるね。(断言)
スペクタクルなイリュージョンを繰り広げることも、催眠術で英智に幻覚を見せることもできるだろう。渉は奇術師であり超人だから。
ほかには渉が本当の天使であるというファンタジーな説も見かけました。イイ……。

のちに英智は皆に「去年のクリスマスは独りぼっちで過ごした」と語っている。だがそれが真実であっても、夢の内容が否定されるわけじゃない。
『エレメント』の保健室のシーンも、たぶんきっと現実だけど、英智は夢かもと言っているしね。
夢だったのかなぁ、それならそれでいいけど 明日には、会える。舞台で、この現実で……。ようやく、辿りつけたんだ
(『エレメント』灰は空に帰す/第六話)


・すべてが幻だよ派
憧れのアイドルの訪問なんて本当はなかった。ぜんぶ英智の言ったとおり、ただの「都合の良い夢」。そうだとしたら切ない。
……いや待てよ。そこが幻なら、そもそもクリスマスに病室で独りで死にかけている英智くんもいなかったのでは……? 良かった。 (「良かった。病気の子供はいないんだ」―閾ペディアことのは
だがクリスマスの夜に限らず、英智が病弱で死にかけなのは大前提としてあるので、これじゃただの現実逃避だな……。

英智が空想にふけって「トリップ」することもあるので、(『ドリームトラベル』参照)これが空想の世界の可能性もあるね。


曖昧さ=読者への優しさ

きっとこのエピソードは、あえてこう曖昧な感じに描かれているんじゃないかな。これなら読者が好きなように解釈できるから。
公式がプレイヤーに妄想の余地を残してくれてる。これはたぶん、日日日先生の優しさだ。メタ的に解釈。


いや~~~~私がフジョシということを差し引いても、既存ストの至るところから運営や日日日先生が英智と渉を相思相愛(?)にしてやろうとする意図をバシバシ感じるんだけど、それだと困る転校生さんもいるよね。
こういう曖昧さの残る描き方なら「渉は英智にキスとかしないし。そういうんじゃないし(怒)」派の人も、打ちのめされないよね。大袈裟な口上のファンサービスだとか、英智くんの妄想だとか、幻だとか……そういうふうに思っておけばセーフです!

魔法のキッスとは……?

英智と渉にくっついて欲しいフジョシにとっても、曖昧さがあるのはありがたい。
もうね、みんな既にいろいろ勝手に妄想しまくった後なんですよ。二人がいつから下の名前で呼び始めたのか?、とか。私もした。
渉がfineに加入した詳しい経緯や、英智が渉に「美しい現実」を教えたシーンも、いつか公式から投下されてしまう? こわいな~~~。楽しみ!

二次創作する人の事情

公式がいろんなエピソードを見せてくれるのは、もちろんすごく嬉しい。
だけど公式情報のチカラは圧倒的に強いので、読者の無数の妄想や二次創作の存在を焼き尽くしてしまう。私は百万通り見たいのに……! みなさん、公式情報が出てもめげずに妄想してくださいね……!! 嘘でも幻でもつじつまが合ってなくても、良いんだよ! 我々は公式ライターじゃないんだぜ!!
(たとえば現代日本でハウルって言ったら、みんなジブリの『ハウルの動く城』のあの青年を思い浮かべると思うけど、二次創作界隈では原作小説『魔法使いハウルと火の悪魔』を読んだ方がいろんな姿のハウルやソフィーを想像・創造してたよ)

あんスタは物語の隙間部分にも後から「正解はこうでした!」と公式が提示してくるので、同人作家さんは苦労しているようだ。
それに、同じ一年を何度も繰り返して、文章量が膨大(※)という性質上、既存ストーリーの補完が他作品とは比べものにならないぐらいあるよね。
(※たぶんもう既存ストが文庫本十数冊分ぐらいになってる)
みんな、把握できてる……?
あんスタから摂取するキャラの台詞の多さ、確実に私がリアルで人と交わす会話より多いよ。私はまだスト全部開放できてないし、読んだストもポロポロ忘れてしまう。(老化)何か忘れてることあったら遠慮なくツッコミしてくださいね。


なぜ英智は「夢を見る」のか?

ところで、なぜ、英智は夢を見るのだろう? いや、みんな普通に見るもんだけど。なぜ、その夢の内容を我々プレイヤーに見せてくれるのだろう?

英智推しの私としては、ここで「英智があんスタの裏の主役だから」とか答えたい。
ツイッターでいろんな転校生さんが言ってるように、「天祥院英智が、『あんさんぶるスターズ』だ」、彼こそがあんスタという世界の象徴だ。そう主張して、妄信的に英智くんを崇め奉りたい。
でも同志以外には、それでは伝わらないよね。(同志には伝わるかのような口ぶり)

あんさんぶるスターズという概念の擬人化(?)


夢のシーンがぜーんぶ嘘!……だったら、描く理由が無いよね。偽情報ばっかり描かれても困る。何か意図があるんだろうな。
病弱な彼はよく入院するし倒れたりもするから、そういうシーンを利用して過去の回想を都合よく入れるため……だろうか?
でもスト詳細のところに「一年前の冬」って書いてくれたら、過去シーンだって分かるよ。(アプリ上では)

(2017/12/08追記:プロローグの季節、ただの「冬」から「一年前の冬」に修正されました)
珍しく告知までされた修正点


推測だけど、たぶん「英智の視点」で描かれていることが、重要なのかな~。

英智の見ている幸せな夢や悪夢を見ることで、読者に彼の心情が伝わってくる。虚勢を張って皇帝らしく振る舞っていてよく見えない英智の心の中が、ちょっとのぞける。
そうでもしないと、ほとんどの読者が天祥院英智というキャラを勘違いしたままになるんじゃないだろうか。冷酷で、Trickstarやその他のキャラに酷い仕打ちをして、全校生徒を敵に回して偉そうに君臨しているいけすかない奴。まぁ、そういうのもまるきり嘘ではないけど。それだけが彼じゃない。


英智の心境を推測する

たとえば『Daydream』で描かれているのは、五奇人最後のひとり・日々樹渉と旧fineの対決シーン。
幕が降りる前に倒れそうになった英智を、ユニットメンバーは助けようとせずに去っていく。英智を支えてくれるのは敵である日々樹渉だ。

ノベライズを読んですぐの頃はこの物語を鵜呑みにしてしまってたけど、今いろんなストを読んだあとだと、英智による脚色を感じる。これはきっと事実そのものじゃない、英智はこう思っていた、こういう悪夢にとらわれていた……という話だと思う。かなり被害妄想が入ってるのでは。


英智の脚色(ネガティブなフィルターがかかってる)と思う点

・英智がユニットメンバーや渉から怨まれている
つむぎ、日和、凪砂の性格を知ったあとだと、彼らが誰かを強く怨んだりするとは思えない。渉もね。(ノベライズ執筆当時は旧fineメンバーの具体的なキャラ像がまだなかった、のも理由だろうけどね)

・倒れた英智に「無様ですね」と言う日々樹渉
渉はこんなこと他人に言いそうにない。渉に無様な姿を見せたくない、という英智の心理の裏返しに思える。(『ジングルベル』参照)

・血の塊を吐く英智
『エレメント』エピローグでも「血を吐いて……」と言ってるけど、英智が実際に喀血したというよりは、比喩表現のように思える。
英智はよくコホコホ咳してるけど、もし呼吸器が悪くて出血したとしても、血の塊までは出ないんじゃないか? というかその絵面が辛くて受け入れられないから幻であってほしい。(ただの願望)


『ティーパーティ』では英智が転校生に「また悪い夢を見てしまいそうだ」と語るシーンがある。英智の悪夢とはDaydreamのことではないだろうか。ほかにどこかで悪夢見てた?
けれど人生はつづいていくからね、退屈しないようにお話をせがんでみるよ ルイス・キャロルのように、夢物語を聞かせてほしい。でないと僕はまた退屈して、眠りに落ちて悪い夢を見てしまいそうだ♪ 
(ティーパーティ 夢のつづきを/第六話)



「現実」についての台詞


夢じゃなくてこれは現実、と言っている台詞を集めました。
「あんスタの物語のアレコレは夢ではなく現実だと信じたい派」の人は参考にしてみてください。

どこまでが夢だったんだろう――すべてが、僕が病室で見ていた夢だったりしたら愉快だけれど。(略)
けれど、夢じゃない。僕はまた、混沌のなかにいる。


この現実は、人生は、邯鄲の夢なんかじゃない 敬人が、渉が、○○ちゃんが……。みんなが、僕に教えてくれたんだよ もう死にもの狂いで、破滅に向かって突き進むだけの悪い夢は終わったんだ
(ティーパーティ 夢のつづきを/第六話)





夢を、見ていたみたいだ。ぜんぶ夢だったら愉快だけどね、夢にしちゃいけない…… 血を吐いて、みんなを傷つけ踏みにじり、夢を現実にしたんだから
( エレメント エピローグ①) 




これは泡沫の夢なんかじゃない、俺たちが死に物狂いで勝ち取った現実なんだ 幾久しく、この花を咲き誇らせてみせよう
(フラワーフェス 花道/第三話)




ユニットソングCDに収録されてるショートドラマでも、英智と渉が次のような会話をしていた。

英智「またみんなと一緒に何かをやり遂げられるなんて、夢のようだよ。病院のベッドで寝起きしていたときに見た夢が現実になったんじゃないかって、錯覚してしまいそうだ」

渉「夢ではありませんよ、英智 すべて現実で起こっていることです この未来を掴みとれたのも、ひとえに英智の働きによるもの しかし、これくらいで満足されては困ります 英智は夢ノ咲学院、いいえ! 世界を掌握するアイドルになってもらわなくてはこの私がお仕えした意味がありません!」
『fine』ユニットソングCD 第一弾 ショートドラマより)


「この愛すべき現実でずっとお待ちしておりました~☆」(エレメント)
「夢よりも、よほど美しい現実が…… いつだって、この世界には広がっているのにね。それを私に教えてくれたのも、あなたでしょう?」(ミルキーウェイ)
と英智に言う渉の台詞も、彼らが夢ではなく現実の世界を生きているという証だろう。

渉は現実を、この世界のすべてを愛している。
……1年前、現実とは隔絶された舞台だけが私の居場所です……みたいに言っていた渉が? 英智のおかげで? ………ヤバいですね……………。(言葉を失う)



「願い」のほうの夢

チェックメイト』では英智が自分の計画を「誇大妄想みたいで恥ずかしい」と言っていた。けど、妄想はすべての始まりなのではないだろうか。
(2017/12/04追記:言葉が足りなくて分かりにくいね……。
「英智が夢見る存在だからこそ、今の夢ノ咲学院があるのだ」とも言いたかった。)

フィクションとして作られる物語も、この現実で人が紡ぐ物語も、はじめは誰かの頭の中の妄想でしかない。それが文字やことばや画像や映像、いろんな形でアウトプットされると、世界に影響を与えられる。夢には現実を変えていくチカラがある。

私がちっぽけな部屋の中で綴ってるこの文章も、どこか遠い地の転校生さんの目に入って、その人の人生にほんの少しでも関与できる。(読んでくれてありがとうございます!)

だから夢ノ咲の子にも、転校生さんたちにも、これからも無限の夢を見せてほしいよ~~!
日日日先生、みなさん~~~~!!! 応援してます! よろしくお願いします!!!!
(先生にはここで書いても伝わらないので、先日初めて紙のファンレターをノベライズ編集部へ送りましたw)

とりあえず今は『ノエル』をがんばって走ります!





1 件のコメント :

  1. musicからあんスタにハマった新参者です。
    アニメ等を視聴して英智が気になり、色々調べているうちにこの記事にたどりつきました。これはどういう事だったんだろうと漠然と思っていたことを言葉にされていて、とてもすっきりし、同時に更に英智(もといfineの面々)が気になりました。
    この中だとユニットCDがまた履修できていないので購入してみようと思います。
    素敵な記事をありがとうございました!

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