<英智と渉について語る>同人誌の解説と補足

エレメント』を中心に、いろんなストーリーから英智と渉について考えた記事です。
『エレメント』は地獄のようなストーリーだったとか、悲劇だったとか、そういう意見をよく聞きます。私も最初はそう感じていました。でも、本当にそうなのでしょうか?

2017年6月11日 brilliant days9で頒布した自作の同人誌『はるかなる楽園より』の補足ですが、これだけでも読めます。たぶん。
言いたいこと全然漫画で表現しきれなかったので、文字で解説します。

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※BL的な描写は一応無いですが、描いてる私が腐っている上、ストーリーに出てくる「求婚」などの言葉を使います
※独自解釈を大いに含みます



第一章 「天祥院英智の夢と記憶」

・英智につけたキャッチコピー〔深淵より仰ぎ見る者〕について
学院の改革を進める英智が、地獄のような場所にいることを深淵と表現した。
彼はそこから、「普通の」健康な人たちやはるか高みにいる天才たちを、うらやましく思って見上げている。高い所から民衆を見下ろしている人ではない。(そう見せてはいるけど)
人間が羨ましくてじぃっと見上げている、その印象は『うしおととら』の最大の敵「白面の者」にも通じるところがある。

英智の『夢』

英智は作中で何度か眠っている。『エレメント』、『ミルキーウェイ』などで眠っているところが描写され、英智が夢を見ている様子がうかがえる。書き下し小説『Daydream』では「どこまでが夢だったんだろう――」と書かれ、夢と現実の境界は曖昧にされている。どこまで現実に起きたことの記憶で、どこから英智の脳が作りだした幻想なのかはわからない。だが、
人間は誰しもエピソード記憶のなかで生きている、フィクションとノンフィクションに差異はないよ (『エレメント』地獄の沙汰も 第五話)
英智がこう言っているように、幻想の夢も記憶も、全部英智の人生なのではないだろうか。

ぶっちゃけ、こう書くことで話のつじつまの合わないところを「夢の部分かな?」と思ってもらえるかな、と狙いました。()

・英智が欝々としてる
悲壮な決意で改革を進める英智のことを考えると、こちらも気持ちが落ち込む。この章、英智の目にほとんど光がないんですよね……。笑ってほしい。
暗くしすぎたか…?不穏な言葉使いすぎ…? と、描いててすごく心配になったけど、原作に書いてあるからなぁ。

・英智と「魔王」
魔王と言えば朔間零ですよね。渉に「我らが魔王」と呼ばれたりしています。
なぜここで英智が魔王と言いだしたかというと、エレメントのプロデュースコースでつむぎと英智がこんな会話をしていたからです。

つむぎ「英智くんがゲームの世界に入ったら、どんな職業に就きたいですか?」
「魔王かな」
この会話を見て、英智がなぜ勇者ではなく魔王を選んだのかずっと疑問に思ってたんですよ。本心では主人公になりたいと望んでいるけど、自分は勇者(=主人公)になれないと諦めているからかな。

・英智は自分を「ご馳走」に見たてたりするのか? 問題
Daydreamの文章を改変して、まるで自分を「ご馳走」のように言わせてしまった。そんなこと言うかな?と悩んだけど結局そのままにした。
原作では、本当は観客に調理して食べさせるのは「僕たちの夢」だ。自分を切り刻んで売り物にしてる、という表現は最近『ランウェイ』の瀬名で出てきたね。

・「僕の腹の中はさながら地獄」
こんなセリフは原作にはない。
以前どこかで見かけた、「手あたり次第食いたいだけ食うやつ、あらゆるものがごちゃ混ぜになって 腹の中地獄かよ」みたいなやつが元ネタ。肥満を戒める言葉で、有名なコピペかなんかだと思うんだけど分からん…。
英智くんは太ってはないけど、公式で「悪食」「ブラックホールじみた食欲」なのでそう表現した。

・「神さまにだって文句は言わせない」
英智は運命を、神を恨んでいるんじゃないかな。
でも、英智はたまに神さまの話をする。本心では神に愛されて生まれたかったし、神を愛せる自分になりたかったのだと思う。

・「つらく苦しいお芝居はこれで終わる」
五奇人討伐のための「お芝居」を、英智は愉快だと思ってやっていたわけではない。王者のように余裕を見せていても、苦しんでいたはず。何も感じていないわけではない。

・倒れる英智に手を伸ばす渉
Daydreamの記述どおりにするならば、英智は渉に腕で支えられて顔に吐血する。
でもこの本では渉と離れたところでひとり倒れる英智、という図を描いた。
渉は手を伸ばしてくれるけど、その手は英智に届かない。これは英智の悪夢かもしれない。

英智は、過去の所業についての謝罪も後悔もしない、と言う。
でも、Daydreamでは生まれて来たことを謝っている。


第二章 「日々樹渉の思惑」


・渉につけたキャッチコピー〔楽園より見はるかす者〕について
渉は観察力がとても鋭い。一段高い次元からこの世界を把握しているのではないかと思うぐらい。高みにいる渉を楽園にいるひとと表現した。

渉の『思惑』


渉の考えていることがよく分からない。いちばん不可解なのはfineに入ったいきさつだ。
奏汰とかに「他人に興味がない」と言われていた渉が、どのようにして英智に興味を持ち、皇帝の左手になったのか、与えられた情報からいろいろ想像してみるしかない。
渉視点の追憶が来たら少しは明らかになるんだろうか。

・五奇人と五芒星
『エレメント』はなぜエレメントというタイトルなのだろう…? と悩み、「五奇人が5大元素だから」という解釈をした。夏目くんが星型のペンダントしてるしね。
というわけで、五芒星に五奇人を図示して、思想(?)をアピールした。

・「私はあなたを知っています fineの天祥院英智くん」
エレメントでは、保健室で英智と渉が出会うシーンが描かれている。
それより前に渉は英智の存在や、この五奇人討伐の「脚本」の存在に気づいている。

・「最初から『悪人』に生まれる赤ん坊はいません」
これは『うみねこのなく頃に』ベアトリーチェの台詞の引用。『うみねこ』は私の人生観、物語観に深く影響を与えています。
周囲の環境ばかりは、自分の意志でどうにかできるものでもありませんしね 環境が人間をかたちづくる…… (『ミルキーウェイ』巨星、墜つ第一話)
英智がこんな人間になったのは、育った環境が大きいのではないか。
とはいえ、英智は16歳。もう小さな子供ではなく、視野もほかの同級生より広い。英智があえて茨の道を進むのは、英智自身の意志がある。(英智がちっちゃな子供みたいだと言われてるのはここでは置いといて)
想像上の天祥院パパ&ママ

・大勢を救うために誰かを犠牲にすることは『正義』なのか?
この【トロリー問題】(Wikipedia)が、英智の過去の所業のテーマだと思っています。
英智の選んだ道も、ひとつの正義の形だったと思う。だけど、英智自身が認めているように残虐なやり方だった。渉はそれを承知して受け入れた。
渉が自ら望んで、(むしろ嬉んで)あの処刑のステージに上がったことは、大きな意味があったと思う。

・「あなたが全身全霊を捧げて登った舞台の共演者に、私を選んでくれたのですね」
英智が全てを賭けて改革を進めて、奇人たちをその舞台の相手に選んだこと、これは求婚に等しかったのだと思う。
初めてエレメントを読んでるときに突然渉が「求婚されてるみたいです!」と言いだして驚いたけど、そういうふうに思えばすんなり納得できました。


・「生涯で一度でも誰かにこれほど求めてもらえるなら、生まれて来た甲斐がある」
これも『うみねこ』紗音の台詞からの引用。プロポーズされること、熱烈に誰かに求めてもらえたことが、それだけでもう人生のひとつのゴールのようなものだ、という感じの台詞です。

・渉の髪の色の謎
一年前は毛先が紫、3年生になってからは毛先がブルーになっている渉。てっきり英智の目の色だと思ってたんだけど、オフィシャルワークスでは、英智の目の色がブルーじゃない段階で渉の髪の色が今の色でしたね…。

・英智と友達
3年生の段階で、友達というものにまだ苦い印象を抱いている英智。
エレメントでつむぎを失って以降、誰かと友達にはなっていないんだろうな。(今はまた普通に接するようになってるけど)
渉は、友達ではなく「皇帝の道化ですよ」と主張することで、英智のそばにいられるんだ思う。

・渉のfine加入
オフィシャルワークスでは「英智が勧誘した」と書いてあったね。私は渉が自分から飛び込んで来たみたいに描いてしまった。このタイミングで正解(?)が明かされて、やっちまった感がある。まぁ、二次創作は妄想の塊だからね!

夏目くんが「五奇人を裏切ってfineに入った」と言ってるので、渉は五奇人の友達と疎遠になることを覚悟の上で、fineにも進んで加入したんだろう。せっかく出逢えた親友たちなのに。そこまでして英智のそばに来たって、ものすごいよね……!
「求婚」した相手がfineに入ったなんてもう、「結婚」だな、と思いました。


余談ですが、私はこちらの記事→ 『英雄神話の力』 ベイマックスはキリストである-日本美学研究所 をあんスタに重ねて読みました。あんスタはやはり神話だったんだ…!(?)

一年前の夢ノ咲では英智が主役で、数々の試練を乗り越ていく。最後には「女神」と「結婚」して英雄=『皇帝』になる。あんスタには公式に女神とたとえられているキャラがいますね。そう、渉です。
現在の夢ノ咲ではもちろん英雄(=主人公)はTrickstarで、英智は王位を継承してくれる偉大な先代の英雄であり、倒すべき敵(=主人公の影)でもある。ここでも渉は重要な役割(DDDで北斗に手紙を渡し、Trickstarの危機を救う)を果たしている。

・渉の鳩
英智の部屋で語る渉の肩に、ずっと鳩をのせてます。鳩の動きも楽しんでもらえたらうれしいです。鳩とか背景のベッド、ぜんぶ素材です。素材の制作者さま、ありがとうございます。



※渉が途中でジャケットを脱いでるのは、あのジャケットを着た状態で椅子に座る図が描けなかったから…画力の問題…

・英智の手を握る渉
第一章のラストでは、英智は渉の手をつかめず沈んでいった。
その対比で、第二章では渉が英智の手を握る。前者は悪夢で、こちらが現実であってほしい。

・どんな夢よりも恐ろしく愛おしく 醜くてなお美しいこの現実
私たちも、あなたのことが恐ろしくて愛おしいですよ……英智 
夢よりも、よほど美しい現実が……いつだって、この世界には広がっているのにね。それを私に教えてくれたのも、あなたでしょう? (『ミルキーウェイ』エピローグ②)
英智は夢を見る。渉は現実が美しいと言う。演劇や映画・アイドルのステージといった、「フィクションの世界」で生きているように見える渉が、現実を美しいと言えるのは、英智が教えてくれたから。
これ、英智推しと渉推しにとってのサビです。テストに出ます。



『怪盗』で渉が「綺麗は汚い、汚いは綺麗」と言うところがある。
これはシェイクスピアの『マクベス』の魔女がとなえる呪文らしいのですが、この呪文の意味するところは「汚いものがあるから美しさがある。一対になっている」だ、って解釈を見かけて、「相反した生き様を両立させている」英智のことじゃん!と思った。うまく言えないけどそんな感じです。

あとこの本で地味に力を入れているところはルビなんですが、ここでは「現実」に「せかい」とルビをつけてます。(ドヤ顔)


第三章 「魔法使いの弟子」

タイトルはもちろん、渉を師匠と慕っている夏目くんのことです。

・渉を祝福する夏目くん「あの日のステージは結婚式場だったヨ」
原作では、Switchの門出ライブをfineが応援する流れになっている。
この本では、fineとして新たな道を歩む渉を、夏目くんが祝福している。
夏目くんは英智のことを今でも強く憎んでる、と言う人もいるけど、私はそうは思わない。渉が選んだfineや英智を信じてると思うし、憎んでいたらエレメントエピローグであんなふうに協力を要請しないんじゃないかな。去年のやりかたに納得はしてないけど、渋々現状を受け入れてると思う。


エピローグ

・「英智は腹黒いのか?」問題
僕が腹黒いみたいに言わないでくれないかな、弓弦? (『スーパーノヴァ』偽善と正義 第一話)
英智は、たぶんfineのメンバーには腹黒いと思われたくないんだろうな。渉にはここで答えをはぐらかしてもらった。私は、英智は純粋で狡猾で腹黒くて、その黒さも自覚してると思っている。

 表紙について

表紙の英智は膝をついている。でも、きっと英智はステージで弱った姿を見せることは無い。

メインストーリー第123話より

靴を見ればその人がどんな人か分かる、と言うよね。良い靴を履き、シワのない靴の持ち主はきっと高貴な人。英智は言うまでもなくきれいな靴の持ち主のはずだ。そんな人でも、靴をダメにするような動作をすることがある。
そう、プロポーズです。
英智の膝をついたポーズは、改革を進めるときの悲痛な心と、渉への【求婚】と、ふたつのことを表現したつもり。


渉は、「楽園」から人の世に降りてきているイメージのポーズ。
タイトル『はるかなる楽園より』の「楽園」は、奇人たち超人的なチカラを持つ天才たちのいる、高みのことです。『サーカス』でも綱渡りの綱の上を、渉が楽園と表現してるよね。
下に書いてる英語の副題は「楽園からの移住者」のつもりでつけました。


エレメント、初めて読んだときは渉の笑顔が逆につらかった。そしてあのBGMに悲劇気分をかき立てられた。でも今は、渉の笑顔をそのまま笑顔と受け取り、「心配しなくていいのでは?」と考えるようになり、ハッピーな話なのではないか?とすら感じてます。あのストーリーは英智と渉にとってのハッピーエンド…いや、ハッピースタート(※)だったのでは?(※結婚指輪かなにかの広告に書いてあったコピー)


こういう感じで、この本は卒論を書くような意気込みでがんばっていろいろ書きました。卒業はまだできそうにありません。
「英智と渉、結婚してる」が一番のテーマだったので、誰かにこの想いが伝わったなら本望です。



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